「心が温まる本、明日からまた強く生きていく勇気を与えてくれる本。」X JAPAN YOSHIKI氏推薦

これはある意味「アンチ自己啓発書」かもしれません。

というのも、「あなたのその夢、本当に自分の夢ですか?」と問いかけてくる本だからです。

劇場の支配人が、悩める5人の男女と会話しつつ、相手の悩みを解きほぐしていく……という内容なのですが、この支配人の質問がじつに鋭い。

ぐいぐいと悩みの核心にせまっていき、ときには大きく心をゆさぶるような発言もするのです。


自己啓発書を読むような人の多くは、達成したい目標、叶えたい夢があります。

ですが往々にしてその夢は、世間から植えつけられたものであったり、過去の屈辱を晴らすために持ってしまったものだったりするのです。

これが本当に、自分の夢といえるのでしょうか。

いつのまにか、他人の価値観を自分のものと思い込み、偽物の夢を追いかけてしまっていないか?

今、あなたが苦しんでいるのはそのせいではないのか?と、支配人はこちらに問いかけてくるのです。


一人目の相談者、「翔太」のストーリーに強く惹きつけられました。

社長になりたい、お金持ちになりたい、もっと女性にモテたい……という俗な願望を持つ翔太の話に、支配人はまず耳をかたむけます。

そして、どうしてお金がほしいのか、本当に大金を得れば心が満たされるのか、と問いを重ねていくのです。

人もうらやむ、美人の彼女がほしいのはなんのため?一体だれの目を気にして、そんな願望を持ってしまったのか?

翔太は支配人と言葉を交わすうち、自分自身と深く向き合わざるを得なくなります。

そして気づくのです。自分は舐められたくなかっただけなのだと。


この翔太のストーリーは、私自身とも重なるところがあります。

私は以前、作家をめざしていました。

ですがなかなか夢はかなわず、周囲の人々が私をさしおいてデビューしていく現実に絶望していました。

ですが、そもそもどうして作家になりたかったのか、私は一度も考えたことがありませんでした。


今思えば、私は翔太のように、世間から見た「イケてる自分」になりたかったのです。

プロ作家になり、有名になれば、価値の高い自分になり、周りの見る目も変わるだろう……と漠然と思っていたのです。

でもそれは、今の自分は価値が低いと思っていることの裏返しです。

この前提がそもそも間違っていたのです。

有名作家になれなければ価値がないのなら、世の中の大多数の人は価値がないことになってしまいます。

価値ある自分になりたいために、本来そこまでなりたいわけでもないプロ作家をめざしてしまったために、私は苦しんでいたのです。


『地平線を追いかけて満員電車を降りてみた』は、かつての私のように、周りの眼や世間の価値観に取りこまれ、自分自身を見失っている人の心を解きほぐしてくれる物語です。

夢をかなえようと努力するのはいいことですが、それが世間に植えつけられた「偽物の夢」だと、生きるのが苦しくなってしまいます。

この本は、偽物の夢を捨て、本来の自分に戻る手助けをしてくれる本です。

読んでいて、多少はストレスを感じることもあるかもしれません。

それでも読み続けることで、確実になにかが変わる。それだけの価値がある一冊だと思います。


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