ブラックユーモアで絶妙に味つけされた、才筆の掌篇秀作集。初期作品18篇を収録した処女短篇集。

阿刀田高作品はギリシャ神話やシェイクスピアの入門書しか読んだことがなかったので、今回初めて小説を読んでみました。

もう40年以上前の作品なので、正直古さは否めません。

むしろこの古さ、昭和の空気を楽しむために読むのがいいのではないでしょうか。

たとえば『幸福通信』では、主人公が行く酒場に流しのギター弾きがいるのです。

今ではもう見ることができない存在ですよね、こういうの。


作風としては阿刀田さんらしく、ブラックユーモアの効いた作品が多いです。

『わたし食べる人』なんかはブラックユーモアを超えてホラーでしょうかね。

大食がやめられない主人公がある精神科医の「いくら食べてもやせられる治療」を受けた先に待ち受ける結末は……というお話ですが、これはオチが読める人もいるかもしれません。

私は楽しめましたが、現代の読者はもっと高いレベルを求める気がします。

昭和はこれでも通用していたのかな……というノスタルジーに浸りながら読むのがいいのでしょうか。


一番のお気に入りは「あやかしの樹」でした。

こういう厭世的な人物しか出てこない、世間とかけ離れた異常な美意識を追求する作品はときどき読みたくなります。

ギリシャ神話の知識もふんだんに用いられていて、作者がのちにギリシャ神話の入門書を書くことを予感させます。

最後はこの作者らしい皮肉で締めくくられますが、この苦みを楽しめる方にはいい短編でしょうね。


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