ブッダから孔子、老荘、道元から西田幾多郎まで。入試問題を導きに基本を明快に説く!

これは今まで読んだ中では一番わかりやすい東洋思想の本でした。

『もっと試験に出る哲学』は、これ一冊でウパニシャッド哲学から仏教・儒教・老荘思想から日本の儒学・国学、さらには日本の近代哲学まで俯瞰できてしまう、きわめてお得な内容になっています。

解説は大変わかりやすく、私はこれを読んではじめて大乗仏教の説く「空」の意味が理解できました。

理解できた気になってるだけかもしれませんが、それくらい解説が簡潔で、頭に入ってきやすいのです。

東洋思想に興味があるけどなんだか難しそう……と尻込みしている方には強くおすすめできる一冊です。


この本を読んでいて気付いたのは、江戸の思想史の面白さです。

4章では江戸の思想について扱っているのですが、ここを読んでいくと、江戸期の日本にもオリジナリティあふれる思想家がいたことがよくわかります。

たとえば古学派の伊藤仁斎。彼は江戸の官学である朱子学を批判し、『論語』や『孟子』の理想に帰れと主張します。

儒教の徳目では仁が重要ですが、伊藤の考える「仁」とは日常卑近な愛情や寛容のことでした。

これは朱子学のように理と一体化して仁をめざすのとは異なる態度です。

朱子学を根本から批判する思想家が、儒教国である中国や朝鮮より先に日本に出たことは画期的です。


いっぽうで、儒教のような理知的な学問を本居宣長は評価しません。

儒教や仏教の説く理屈は、理解しやすいがゆえに人間のつくりごとだと宣長は考えた、とこの本では解説されます。

『古事記』のような大昔の出来事こそ、こざかしい人間の理知を超えた霊妙さがある、ということで宣長は高く評価するのですね。

また、仏教や儒教の説く道徳訓ではなく、源氏物語のような色恋を描いた文芸を、人間の本質を描くものとして扱うのです。

宣長のこの考えは、同時代のカントの理性批判と符合するものがあると著者は書いています。

洋の東西で同時期に似たような思想が出てくるところに、思想史の面白さを感じます。


幕末にいたると、やはり注目されるのは吉田松陰の思想です。

松陰の尊王思想はかなりラディカルなもので、彼は「幕府が正しい政治をしないなら、天皇は幕府を廃止してもかまわない」というのです。

松陰にとり、天皇と人民の心は一体です。なので、天皇の命令があれば人民の力で討幕をしてもいいのです。

この考えの背景には、孟子の易姓革命説があります。古代中国の思想が、はるかに時をへて日本にまで影響を与えているのがおもしろいところですね。

ただし松陰の思想はあくまで儒教を日本流にしたものです。日本は神の血筋を引く天皇が治める国であり、天皇家自体を打倒することはできません。

天皇と人民が直接結びつく「一君万民」が、松陰の思想の中核だったのです。


東洋思想は今一つつかみどころがなく、難解なものが多いので、手ごろな入門書がなかなか見つかりませんでした。

西洋思想にくらべて人気がなく、指導者が不足してるのも理由のひとつかもしれません。

そんななか、『もっと試験に出る哲学 「入試問題」で東洋思想に入門する』は、東洋思想に興味を持つ方へのよきガイドブックになってくれるものと思います。

『もっと試験に出る哲学 「入試問題」で東洋思想に入門する』はkindle unlimitedで読み放題です。

kindle unlimitedのご利用はこちらからどうぞ。