耐える人生か。選ぶ人生か。前向きに「諦める」ことから、自分らしい人生が開けてくる。

諦めたらそこで試合終了?

「諦めたらそこで試合終了だよ」。言わずと知れた、スラムダンクの名言です。

でも、本当に夢をあきらめてはいけないのでしょうか。

勝ち目のない試合は早く終わらせて、別の試合を始めたほうがいいことだってあるのでは?

そんな疑問がつい浮かんでしまう方におすすめしたいのが、為末大さんの『諦める力』です。

結果が出ないのに続ける理由

この夢は追いかけ続けたほうがいいのか、諦めたほうがいいのか。

努力しているのに結果が出ないとき、誰でもこのように迷います。

ここを考えるうえで参考になるのが、2章の「やめることについて考えてみよう」の内容です。

為末さんはこの章で、結果が出そうにないのに物事をやめない理由は

・好きなことだからやめない

・今まで続けてきたからやめない

このふたつに分けられると考察しています。

両者の違いは、割り切りがあるかどうかです。

前者の場合、続けていても結果は出ないだろうけど、それでも好きだからやっているのだ、という当人のなかでの納得感があります。

いっぽう後者の場合、せっかくここまで続けてきたのだから、もっと努力を重ねれば希望は見えるはずだ、という希望的観測が入りこんでいます。

「サンクコスト」に縛られない

為末さんは後者の場合について、サンクコストという概念を持ち出して考えています。

サンクコストとは経済学の言葉で、もう取りもどせない費用のことです。

これまで夢のためにつかった時間やお金は、何をしても取り戻せません。つまりサンクコストなのです。

日本人は、このサンクコストに縛られる人が多いのです。つまり「せっかく今までやったんだから」と考え、見込みがなくても続けてしまうのです。

もう少しで成功できる見通しがあるのならいいでしょう。そこには希望があります。

ですが、「今まで続けてきたんだから、もしかしたらもう少しで成功できるかも」と根拠もないのに考えるなら、それは願望です。

願望と希望を錯覚している人は、やめ時を見失う。為末さんはこう警告します。

「別の人生」にも目を向けよう

為末さんはこの本で、『「今の人生」の横を走っている「別の人生」がある』と語っています。

サンクコストに縛られ、もうこの道しかない、と考えているうちは、この「別の人生」がみえてきません。

ですが、今の道をあきらめることで、より豊かで実になる「別の人生」へと移ることができるかもしれないのです。

もっとも、やめ時はいつなのか、かんたんに決められるものではありません。為末さんもそのタイミングは「体感値」でしかないと語っています。

やめるのがいつであれ、今この道がすべてではないと考えておくことで、別の人生への移行がしやすくなります。

見込みのなさそうな夢に賭け続けることで、今後どれくらいのコストが失われるのか?

『諦める力』は、こういうことを一度冷静に考えてみる視点を与えてくれるのです。

諦めることで見えてくる別の可能性

作家になる夢をあきらめたことのある私には、この本の内容はかなり納得のいくものでした。

為末さんが言うとおり、勝者の陰には数多くの、がんばっても成功できない人たちがいます。

今はネット社会なので、私は20年、30年と書き続けているのにプロ作家になれない人たちの姿も見ることができました。

「やめなかったからこそできた」のは一面の真実ですが、そうした少数の成功者の声にかき消される、数多くの敗者の声も聞くことができたのです。

負け続けた人から聞かされたのは、プロ作家になれた人への嫉妬や怨嗟の声、役に立つかもわからない創作理論、自分を無理やり鼓舞するためだけの精神論など、気が滅入るようなものが多かった気がします。

このまま書き続けていたら、自分もあの人たちのようになってしまうかもしれない……そんな不安から、私は筆を折りました。

するとふしぎなことに、毎日がとても充実してきたのです。

小説のために使っていた時間をすべて趣味に回せるようになったので、そこで心の余裕を取りもどし、昼は存分に仕事に打ち込めるようにもなりました。

プロ作家を諦めることで、平和で充実した日々が手に入ったのです。

これを「別の人生」と呼ぶのは大げさでしょうが、いつになったらプロになれるのか……という不安にいつも追いかけられ、本を出せた人と自分を比べてみじめになっていた日々にくらべれば、ずっと幸せです。


夢を諦めることでしか見えてこない別ルートの人生は、確かに存在します。

そんな新たな可能性に目を向けさせてくれる『諦める力』、ぜひ一度手にとってみてください。

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