僕は天才でもないし、さほど努力家というわけでもない。それでも、漫画家になり、こうしてご飯を食べることができている。どうしてそんなことができたのか?その答えを、僕は本書の中に詰め込んだつもりだ。(エピローグより)

三田紀房さんの創作論と人生論が読める内容

これは漫画家・三田紀房さんの創作論であり、人生論でもあります。

全体として三田さんが正しいと信じることを上から語る感じで、少々押しつけがましさはあります。

ですが、なにも押しつけない人とは、なにも責任を取らない人ではないでしょうか。

「成功したければ型にはまれ」「きみはオンリーワンではない」など、この本で繰り出される三田さんのメッセージは賛否は分かれるでしょうが、こうしたメッセージが必要な人も確実にいると感じられるものです。

それぞれの主張は成功した漫画家の語るものなので、確かに説得力があります。

これからどう生きていいかわからない人、特に創作を志している方にとっては、耳をかたむける価値のある内容だと思います。

まず「型」にはまることの大切さ

この本の一章で、三田さんはまず「型にはまることの大切さ」を説きます。

その理由は、成功には「型」があるからです。結果を出したいのなら、唯一無二の個性などを追求するよりまず先人が用意した「型」を身につける必要があるのです。

三田さんの代表作『ドラゴン桜』も、偏差値30の生徒に勉強の「型」を叩き込む漫画です。

反復練習で型を身につけるからこそ、能力が伸び、効率的に結果を出せるようになるのです。


といっても、三田さんは個性を全否定しているのではありません。

三田さんの考える個性とは、他人と同じことをやる中で、自然と出てくるものです。

インドに旅行したとか、「特別な自分」をアピールする為にあえて身につけるのが個性ではないのです。

時代を切り開く特別な個性の持ち主など、めったにいません。そんなものを目指すより、「二番手を狙え」と花田さんは説きます。

先駆者が作ってくれた道を進むのが、普通の人間が目指すべき道なのです。

アイデアも「型」でつくれる

二章では、三田さんは「アイデアに才能はいらない」と断言しています。

それは、創造とは組み合わせだからです。アイデアの生産法にも「型」があり、それをなぞれば、特別な才能がなくても創作はできるのです。

三田さんはここで『ドラゴン桜』を題材に「型」を語っています。破天荒な教師がダメ高校生を鍛え上げ、夢の実現に導く」というのは一つの確立されたパターンです。

ここに「東大合格」という要素を入れることで、新しい漫画ができあがります。『ドラゴン桜』もまた、「創造とは組み合わせ」という「型」にのっとって作られた作品だったのです。

まずオリジナル幻想を捨て、アイデアの新しい組み合わせを考えること。

ストーリーを作るときも自分勝手なこだわりを捨て、ベタな王道を進むことが大事、と三田さんは語ります。

まず「型」をマスターすることこそが、凡人でもプロのクリエイターになるための第一歩だという主張は、成功した漫画家の発言だけに説得力があります。

評価の分かれそうな教育論

「型」を重視する三田さんだけに、教育においても「型」を押し付けることを説いています。

この本の五章で語れることは「子供に自由を与えるな」です。するべきことは徹底した詰め込み教育で、個性を伸ばす教育などしてはいけない、というのです。

高校野球は全員丸坊主であるべきで、眉毛も剃ってはいけない、それこそが「型」だとこの章では書かれています。

これらの三田さんの主張に、すべて賛成するのはむずかしいと思います。ただ、三田さんがこうした主張をするのは、格差拡大を心配しているからでもあります。

裕福でない家庭に育った子が、学校で「型」を教えられず個性ばかりを伸ばそうと教育されても、肝心の学力が身につかないのではないか、ということです。

落ちこぼれた生徒に必要なのは基礎力、つまり「型」なのだ、という三田さんの主張には、無視できないものを感じます。

これは凡人のための成功法則

タテ社会こそすばらしい、自由より規律を求めよ……といった主張など、この本で説かれる三田さんの主張にすべて賛成できるわけではありません。

こうした組織論は昭和の考え方だ、と反発する方もいるでしょう。

ですが、すべてのことに「型」があり、凡人はまずそれを身につける必要があるのだという三田さんの主張には、確かに一定の説得力を感じます。

まず「型」を身につけてこそ、「型破り」もできる。本当の個性とはしっかりとした基礎の上に花開くものである──という考えは、今でも大事なものだと思います。

『ドラゴン桜』の勉強法も型破りのように見えて実は型に忠実なのだ、という三田さんの主張を読んで、私はこの漫画を読みたくなりました。

三田さんの作品が好きな方は、『ドラゴン桜』や『インベスターZ』などがどんな考えにもとづいて描かれているかを知るためにこの本を読むのもいいかもしれませんね。


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