悩みは「消す」ことができる。そしてそれには「方法」がある――ブッダの「超合理的で、超シンプル」な教えを日常生活に活かすには? 注目の“独立派”出家僧が原始仏教からひもとく“役に立つ仏教”。

人の持つ悩み、苦しみの多くは「反応」からもたらされます。

この本で取り上げられる反応とは、欲望・怒り・妄想。

これらをやわらげ、軽やかに生きていくための方法が初期仏教では説かれていた、というのがこの本の内容です。

この本に書かれているメソッドは自分自身実行していますが、確かに心が軽くなる効果を感じています。読むだけでなく実践すれば、徐々に「反応」せずに生きていくコツがつかめると思います。

悩みから抜け出るにはまず「理解」する

仏教は人生を「苦」ととらえますが、苦の原因は執着であると考えられています。

この本ではさらに踏み込んで、執着を生み出すのは「心の反応」であると考えます。反応こそが悩みの正体なので、なるべく無駄な反応をなくすことが、悩みをなくすコツです。

では、どうすれば反応せずにすむでしょうか。そのためには、まず心の状態を正しく理解することです。この本の一章では、まず心の状態を言葉で確認(=ラベリング)することで、反応から抜け出せると説いています。

今自分は怒っている、欲にとらわれている、妄想してしまっている──などとラベリングすることで、自分の心の外に立つ感覚が得られます。自分自身をメタに観察することで、反応に呑まれずにすむようになるのです。

自分の心を見つめ、怒りの正体に気付き、怒りをいなしてストレスをためない方法などを、テレビでもおなじみの精神科医・名越康文氏が詳説。大ヒット単行本『自分を支える心の技法』に大幅加筆をした完全版です。

このラベリングの技法は名越康文さんが『自分を支える心の技法』でも紹介していて、実践してみたところ、確かに心が軽くなる効果を感じられました。仏教には悩みから抜け出すための実践的なメソッドが用意されていたのです。

そして、身体の感覚を意識することの大切さも説かれています。悩みはすべて心の中で起きているので、身体に意識を向ければ反応から抜け出しやすくなります。とかく頭でっかちになりがちな現代人にとり、これは大事な教えだと思います。

無駄な判断をなくすためには

悩みを生む原因として、「判断しすぎる心」もあります。

この本の2章では、判断がもたらす様々なデメリットについて書いています。「どうせ自分なんて」という自虐も判断ですが、これはうつや自己評価の低下などをもたらします。「大学に行けなかった自分には価値がない」という判断が、娘に受験勉強を強要する原因になる例も紹介しています。

判断は人の心を苦しめる猛毒になり得るものですが、それ自体は頭の中にしかない、ただの妄想です。

では、どうすれば判断をやめられるでしょうか。この本では一つの方法として、「あ、判断した」と気づく方法を紹介しています。

判断したという自覚を持つことで、無駄な判断から抜けることができるのです。


でも、「世の中には必要な判断もあるのでは?」と思うかもしれません。私たちは生きていくうえで、さまざまな判断を求められることがあります。

無駄な判断と必要な判断は、どう区別すればいいのでしょうか。この本では、有益であることは正しい判断と考える、と書かれています。

仕事なら利益が上がる、働きやすい環境をつくるような判断は正しいことなのです。逆に、こうした実益につながらない判断は妄想であり、早くそこから抜け出したほうがいいことになります。

とはいえ、人はなかなか無駄な判断から抜けられないものです。なぜでしょうか。この本では「判断すること自体が気持ちいいから」と説明されています。自分はただしいという判断は仏教でいう「慢」の心を生みます。

これは一時は気持ちいいですが、傲慢な心はやがて失敗を生むので、実益につながりません。「慢」を生んでしまう判断は、しないほうが得策なのです。

快をめざして生きてもいい

『反応しない練習』は仏教がベースになっているわけですが、仏教というと徹底的に欲をなくしていく、というイメージがあります。

一切の反応をなくし、悟りの境地をめざすのも仏教のひとつの方向性ではありますが、出家修行者でもないかぎり、なかなかそんな生き方はできません。

そこでこの本の3章では、「快を大切にしていい」と主張しています。欲だって生かしようによっては、人生を充実させる手段になります。欲を追いかけること自体が悪いわけではありません。

欲を追いかけるうえで大切なことは、そこに「快」が感じられるかどうかです。欲が大きくなりすぎて焦りや不安にとらわれたり、人に認められないという不満が大きくなったら、いったんその欲求は手放す必要があります。

欲求が生きるエネルギーになり、「快」を感じられるならいいですが、ふくらみすぎた欲求が不快をもたらすなら、その欲求から離れなくてはいけません。

ここでもやはり大切なのは、自分の心をよく観察することです。今自分が感じているのが快なのか不快なのかを見極めることで、充実した生き方が可能になります。

このように、仏教の教えを実生活に落とし込むために現実的なメソッドを説いているのが、この本の優れている点です。

俗世に生きる人にも「使える仏教」をわかりやすく教えてくれるこの本は、心を軽くするうえで大いに役立つものと思います。


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