Kindle Unlimitedのトップページを見てみたら、「文芸春秋社の本が80冊以上追加」との文章が。

以前から読みたかった文春新書や、半藤一利さんの著書も多数追加されていました。

ここでは今回追加された文春新書のなかから、おすすめ本をいくつかご紹介します。

世界史のエッセンスがこの一冊に!

『世界史の新常識』は古代から近現代にいたるまで、世界史の興味深いトピックを時代ごとにとりあげています。ペルシア帝国に操られていた古代ギリシア、明に大きな影響を与えた火縄銃、イギリス料理がまずくなった理由……などなど、世界史に興味のある方ならどこかに読みたくなる箇所が見つかるはずです。

執筆者は歴史学者だけではなく、キリスト教については神学の専門家の加藤隆さん、世界大恐慌については経済学者の竹森俊平さんなど幅広いジャンルから集めているのも特色です。

4章のブックガイドも、世界史をより詳しく知るうえで役立ちます。グローバルヒストリーについて知りたい方は、この章で世界システム論のおすすめ本について知ることができます。解説しているのは『砂糖の世界史』著者の川北稔さんなので安心。(『砂糖の世界史』はAudibleで聴くことができます)

いまの時代、マインド・コントロールは、テロリストのような見るからに危険そうな集団の専売特許ではなく、親切な顔をして、いつのまにか懐に入り込んでくる。カルト集団やブラック企業のみならず、あらゆる組織が、この技術を援用している現代、氾濫する情報の海に呑みこまれないためにはどうすればいいのか。

カルト宗教から霊感商法にいたるまで、マインド・コントロールの手法はあらゆるところで用いられています。この本は、マインド・コントロールを可能にする環境からコントロールされやすい人の特徴、そして各種マインド・コントロールの手法から洗脳を説く技術まで解説しています。

一章を読むだけでも、なぜテロリストのように自己破壊的な行動を他人にさせることができるのかを知ることができます。この章では、人がテロリストにいたる「トンネル」があると説かれています。人を外部の世界から遮断し、かつ視野を小さな一転に集中させることが「トンネル」の要素です。このプロセスを経ることで、外部とは違う特殊な価値観を植えつけることができてしまうのです。

カルト宗教やテロ集団だけが「トンネル」を持っているわけではありません。スポーツチームに所属すること、受験のための進学クラスに入ることも「トンネル」の要素があると著者はいいます。私たちに日常にも、マインド・コントロールを受けるリスクが潜んでいるのです。各種マインド・コントロールの手法を知るだけでも興味深いですが、洗脳から自分の心を守るためにも読んでおきたい一冊です。

現代人が読んで心を打たれる、それが『歎異抄』。金言・箴言に満ちたこの書は、思想的には難しい。平易な解説で深みまで導きます。

歎異抄といえば「悪人正機」が有名ですが、この言葉の意味についてこの本の3章ではくわしく解説されています。悪人とは「悪い人」ではなく、煩悩にまみれていて自力で往生できない人のことです。そのような「悪人」を救おうと阿弥陀如来は願いを起こした、ということです。

著者の釈徹宗さんは、ここに宗教の本質を見ています。「悪人こそ救われる」は、社会とは別の価値体系です。社会と別の価値観を提示できないのなら、宗教の存在意義はほとんどない、というのです。徹底的に弱者のための仏道、愚者のための仏道を示したのが浄土教だったわけですが、そこを追求したために「仏教の絡まで破って飛び出した感がある」ともこの本には書かれています。

このため、浄土教には批判が多いのも確かです。この本では浄土宗への批判も多く紹介していて、それはどれもそれなりに納得のできるものです。一方で、西田幾多郎や吉野秀雄のような近代的知性が、『歎異抄』に惹かれています。この本を読めば、そんな『歎異抄』の魅力の一端にふれることができると思います。

日本史は暗記科目じゃない!天皇、土地、宗教、軍事、地域、女性、経済。七つのツボを押さえれば、日本史の流れが一気につかめる。最もコンパクトな日本通史、登場。

荘園制度って何?どうして武士が誕生したの?といったことが気になる方は、この本を読んでみてください。「土地を知れば日本史がわかる」の章を読むと、なぜ荘園というものができたのか、武士が荘園にどうかかわってくるのかがよくわかります。

この章によると、荘園とは「口利きの体系」なのです。土地を開墾する開発領主が、土地を国司から守るためにより強い立場の貴族や自社に保護を求めます。ここで「土地を寄進」することになりますが、寄進とは国司に手を引くよう「口利きを依頼」するということなのです。こうして、土地を管理する下司職の上に寺社や貴族などの領家や本家が位置する「職」の体系が成立しました。

ところが、領家や本家が本当に荘園を守ってくれるかどうかはわかりません。彼らは地方への関心が薄く、土地の保証というサービス感覚もあまり持っていないのです。ここに、武士が登場する理由ができます。誰も土地を守ってくれないのなら、自分で武装して守るしかないからです。このように、土地という補助線を引くことで日本史の理解がかなり明確になります。土地以外にもこの本では天皇・宗教・軍事・地域・女性などのテーマから日本史をわかりやすく語ってくれるので、まず大づかみに日本史を理解したい、という方には特におすすめです。

構造主義という思想がどれほど難解とはいえ、それを構築した思想家たちだって「人間はどういうふうにものを考え、感じ、行動するのか」という問いに答えようとしていることに変わりはありません。ただ、その問いへの踏み込み方が、常人より強く、深い、というだけのことです。ですから、じっくり耳を傾ければ、「ああ、なるほどなるほど、そういうことって、たしかにあるよね」と得心がゆくはずなのです。(「まえがき」より)

構造主義の分かりやすい入門書です。マルクスやニーチェ・フロイトなど構造主義にいたる思想の流れを追ったのちフーコー・バルト・レヴィ=ストロース・ラカンの「構造主義四銃士」を解説する流れになっています。

「構造主義四銃士」の解説では、サルトルとレヴィ=ストロースとの論戦の部分が読みどころのひとつです。ここで実存主義哲学者・サルトルをレヴィ=ストロースが論破する流れは学問の迫力を感じさせるものです。「歴史」を究極の審級ととらえるサルトルに対し、そんな物差しを認めないレヴィ=ストロースがおこなった批判は鋭いものです。歴史的に正しい決断ができるとするサルトルの考えは、レヴィ=ストロースにいわせれば「野生の思考」そのものであり、自己中心的な知のあり方なのです。思想界の巨人が自分自身の知の檻から出られなかったことを思うと、人間の認識がいかに不完全か、いかに私たちが独断に陥りやすいかを思い知らされます。