Kindle Unlimitedではたくさんの漫画が読めますが、なかでも歴史を扱った作品は少なくありません。
ここではKindle Unlimitedで読み放題になっている作品で、おもしろく読めて歴史も学べる漫画作品を選んでみました。
作品は日本史・世界史問わずとりあげ、時代順に並べています。皆さんの漫画ライフの参考になれば幸いです。
Contents
マンガ 面白いほどよくわかる!古事記
漫画と内容の解説がセットになっているので、これ一冊で古事記がよくわかるつくりになっています。
漫画で取り上げているのはイザナギ・イザナミの国生み神話やオオクニヌシの国造り・ヤマトタケルの活躍など有名なエピソードです。
ヤマトタケルの章ではヤマトタケルの伝承が残る場所を地図で紹介したり、ヤマトタケルが実は天皇だったという異説を紹介するなど、古事記に興味を持たせるための解説が充実しています。
巻頭には神々や天皇の系図も載っているので、内容と合わせて読めばよりわかりやすくなると思います。
史記 大合本
前半の項羽と劉邦の戦いについてはほぼ史記の内容通りですが、後半の呉越の戦いはオリジナル要素も多く、読みごたえがあります。
この漫画では呉に仕えている軍師の孫子がかなり重要な役割を果たします。呉を支える二つの柱は楚から亡命してきた伍子胥と、この孫子です。
史記での孫子は呉で兵の訓練を担当したことが記されているくらいですが、この漫画では呉が楚や越と戦ううえでつねに策を出し、物語終盤では驚くべき行動に出ています。ここはフィクションなので、史実を知っている方でも楽しめると思います。
呉の力を借りて楚を討った復讐の鬼・伍子胥もやがて権力を失いますが、物語の最後でこの男が見せる姿は必見です。呉越の戦いには孔子やその弟子・子貢も微妙に絡んでくるので、そこも読みどころ。
アレクサンドロス
歴史漫画を数多く描いている安彦良和さんによる、アレクサンドロスの伝記。全一巻なので気軽に読めます。
この漫画におけるアレクサンドロスは戦争の天才ではありますが、完璧な英雄ではなく欠点もありのままに描かれています。たとえばペルセポリス陥落後には兵士に略奪を許し、宮殿まで焼いてしまいます。
「ギリシャ人には友人として振る舞い、異民族には獣に対するように振舞えばよい」と豪語するアレクサンドロスの姿には、恐れを知らぬ英雄の性質が感じられます。かと思うと、次第にペルシア風に染まっていく柔軟性を見せることもあります。
そんなアレクサンドロスに対しては、歴史家のカッリステネスがギリシャ人代表として異議を唱える一幕もあります。いつのまにか部下とアレクサンドロスの間には溝ができていたのです。この溝はアレクサンドロスが進撃を続けるほどに大きくなり、やがてインドでは決定的な事態が起こります。それがなんなのかは、ぜひこの漫画を読んで確かめてみてほしいところです。
達人伝
ほらを吹くしか能がなく文も武も苦手な荘子の孫・荘丹が「虎狼の国」秦の侵略に立ち向かう物語です。
「9年で秦に対抗できる人材を集める」と豪語する決意する荘丹の前に現れる人物は皆魅力的です。情報収集に長けた無名や天下の大盗賊・盗跖、孟嘗君や信陵君など古代中国のビッグネームも多数登場します。
秦の白起は敵役で出てくるので、『キングダム』とはまた別の視点から古代中国の世界を楽しむことができます。
世界女帝列伝 クレオパトラ
古代エジプトの女王として有名なクレオパトラの一代記です。この漫画ではクレオパトラは現実的で賢い君主として描かれています。
ローマのような軍事力を持たないかわり、ナイル川がもたらす豊かな穀物や資源をローマに献上することでエジプトを生きのびさせようとするクレオパトラですが、彼女の考えを理解しないものも多く、1巻では反クレオパトラ派のボティノスに都を追われてしまいます。
やがてローマの覇権を握ったカエサルがエジプトに乗り込んできますが、カエサルと渡り合うために「娼婦になる」と決意するクレオパトラはみずからの身体をさし出しますが、この決断にかつて恋仲だったアントニウスは気を揉むことになります。このアントニウスとクレオパトラの恋の行方も読みどころのひとつです。
女帝の手記
孝謙天皇を主人公とした一代記です。古代日本に女帝は何人もいますが、「皇太子」に立てられ、天皇になるべく育てられた女性は阿倍(後の孝謙天皇)がはじめてです。
藤原一族の繁栄を母の光明子から託され、阿倍は学問にはげみ、政治を学んでいきます。阿倍が皇太子の時代には藤原博嗣の乱や大仏建立などの大きなイベントが起きるので、読んでいるうちに自然と奈良時代の政治の流れを学ぶことができます。
阿倍は藤原氏の力で強引に皇太子になっているため、ライバルも多く先の女帝氷高(元正天皇)にも敵視されています。そんな阿倍の不安を埋める形で彼女に近寄ってくるのが、野心家の藤原仲麻呂です。この仲麻呂と阿部の恋の行方も見どころのひとつです。
実力者の仲麻呂と孝謙女帝の恋愛は、どうしても政治的な色合いを帯びます。仲麻呂を信頼する女帝の態度は彼の増長を招きます。ほぼ依存ともいえる孝謙天皇と仲麻呂の関係性がどうなっていくのか、目が離せなくなる作品です。
漫画方丈記 日本最古の災害文学
タイトルに「日本最古の災害文学」とあるとおり、この漫画には竜巻や地震や飢饉など、災害に苦しめられる京の人々の様子が描き出されています。
街中には飢饉で亡くなったものの遺体が遺棄され、生きているものは自分の家を壊して薪とし売り歩く有様。親は飢えた子供に少ない食べ物を食べさせ、自らは飢えて命を落としていくのです。
漫画の公判では鴨長明が晩年に住んでいた屋敷の図解もあります。年を取って落ちぶれた長明は狭い屋敷に住んでいましたが、琵琶を弾いたり山歩きをしたりと、侘しいなりに生活を楽しんでいるようです。妻子に愛想をつかされ一人暮らしをしている長明ですが、足るを知ればそれなりに幸せなのかもしれません。
まんが人物伝 徳川家康
2023年大河ドラマの主人公になる徳川家康の生涯を描いた漫画です。絵柄に癖がないため読みやすく、1巻で家康の生涯について知ることができます。家康は忍耐強いイメージがありますが、三方ヶ原の戦いでは武田信玄の挑発に乗って激怒し、城を出て大敗するシーンも描かれています。
この漫画では「徳川四天王」といわれる本田忠勝や榊原康正・井伊直正などの活躍も描かれています。とくに本田忠勝は姉川の戦いで活躍するシーンがあり、かなり格好よく描かれています。
これら四天王だけでなく、家臣団に恵まれているのが家康の特徴です。三方ヶ原で家康の身代わりになって命を落とした多くの家臣や、伏見城で戦死した鳥居元忠など、忠実な者たちの犠牲の上に家康の天下は成り立っています。こうした歴史の脇役たちにも目を向けつつ読みたい漫画です。
Kindle Unlimitedで読めるまんが人物伝シリーズは、ほかに織田信長やエジソン・真田幸村などがあります。
乙女戦争
中世チェコスロバキアを舞台とした、た宗教戦争を描いた漫画です。
主人公の少女シャールカは、キリスト教異端であるフス派に兵士として加わり、凄惨な宗教戦争に身を投じることになります。
この戦いでシャールカは、あらゆる残酷な行為を経験することになります。凌辱、飢餓、略奪、拷問……時には眼をそむけたくなるようなひどい場面もありますが、これこそが当時の宗教戦争のリアルだったのです。
フス派の将軍にして戦争の天才ヤン・ジシュカの繰り出す戦法も楽しめますが、戦いで爽快感を味わうタイプの作品ではありません。戦争の残酷さや人の業の深さ、欲望のえげつなさが深く心に刻まれる作品です。
新撰組いちねんせい
新選組の新人隊士、早見純太郎と桃山次郎右衛門のコンビから見た新撰組が描かれています。
新人二人の仕事は掃除や洗濯などに加え、「生首洗い」もあります。新撰組では隊士が士道不覚悟でよく切腹させられていたので、こんな仕事があるのです。
ほのぼのとした絵柄なので、隊士が首を斬られるところもコミカルに描かれていて、小学生でも読めるマンガになっています。隊士もいさぎよく切腹するものばかりではなく、見苦しく言い訳を並べるものもいるのですが、これも武士の現実なのでしょうか。新撰組のリアルをかいま見させてくれる作品です。
日露戦争物語
大日本帝国海軍中佐・秋山真之の活躍を描く物語です。真之だけでなく、正岡子規や南方熊楠など周囲の人物にもエネルギッシュで魅力的な人物が数多く登場し、群像劇として物語が展開します。
海軍士官学校に入ってからは、真之の地頭の良さが光ります。士官候補生同士の対抗戦では作戦能力を発揮し、優しいため人を殴れない山路一善の個性まで利用するほどの冴えを見せます。
海軍内では骨膜炎を患いながら訓練では全速力で走る広瀬武夫の存在感が光ります。広瀬のような軍人も非軍人もあわせ、いずれ劣らぬ明治の傑物たちが多数登場するので読んでいて飽きることがありません。日露戦争だけでなく、明治という時代そのものの荒々しさや上昇志向までを描き切った作品です。
特攻の島
特攻隊をテーマにした作品は数多くありますが、その中でも珍しい人間魚雷「回天」をテーマとした作品です。
主人公の渡辺は絵が好きで本来軍人向きではありませんが、福岡海軍航空隊予科練に籍を置いています。この渡辺がアメリカ海軍に対抗するため「特殊兵器」回天の搭乗員になり、訓練を受けることになります。
訓練の過程で、渡辺は海軍中尉の仁科の指導を受けることになります。決して生還できない作戦に参加することになった渡辺は、回天を作った仁科と対話を重ねつつ、この戦いの意味を見つけようとするのです。
渡辺をはじめとして、極限状況に置かれた若者たちが必死に戦う意味、人生の意義を探ろうとする姿は強烈に印象に残ります。参加者を確実に死に追いやる作戦が組織的に行われるなか、せめて犬死にだけは避けたいという渡辺の悲壮な願いは叶えられるのか。一度読みはじめたら止まらなくなること必至の戦争漫画です。