哲学は難解でとっつきにくく、なんの役に立つかわからない……というイメージがあります。これはある程度事実ですが、世の中には哲学へのハードルを下げてくれる本もたくさんあります。今回はKindle Unlimitedで読み放題になっている本のなかから、読みやすい哲学入門書を集めてみました。
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Contents
やさしすぎる哲学入門
古代ギリシャ時代から近世哲学・現象学や実存主義など、多くの哲学のエッセンスをわかりやすく解説してくれています。ソクラテスは有名ですが、この本では「ソフィストを批判するだけで、結論と呼べるものを打ち立てられなかった」と評価があまり高くないのも面白いところです。
デカルトやスピノザ・カントやヘーゲルなどのビッグネームたちの思想について、さわり程度のことはこの本を読むとわかるようになるので、他の本格的な哲学書を読む前にまずおすすめしたい一冊です。
マンガで読む名作 ソクラテスの弁明
ソクラテスが無実の罪で裁判にかけられ、死刑になるまでの様子を描いた漫画です。ソクラテスが巧みな論理と比喩を駆使し、告発者を次々と論破していく様子を見ていると、彼が弁論の名手だったことがよくわかります。ソクラテスの台詞を通じて、有名な「無知の知」の意味もよく理解することができます。
タイトルは『ソクラテスの弁明』ですがこの漫画には『クリトン』『ソクラテスの最期』の内容も収録されています。この部分はソクラテスが死刑になる直前の様子を描いていますが、ソクラテスを逃がそうとする友人たちの説得に耳を貸さず、従容として死刑を受け入れるソクラテスの姿は感動的です。ただ生きるより「善く生きる」ことを実践してみせたソクラテスは、真の意味での哲学者だったのです。
教養として学んでおきたいニーチェ
ニヒリズムやルサンチマン、永劫回帰、超人などニーチェ哲学の鍵となる言葉をわかりやすく解説しつつ、ニーチェの思想を俯瞰しています。この本を読むと、「現代の預言者」としてのニーチェの鋭さに驚きます。現代人の多くは「絶対的に正しい価値観はない」と考えていますが、これはまさにニーチェが「ニヒリズム」という言葉に込めたことだったのです。
二ーチェは生前「次の2世紀はニヒリズムの時代である」と予言しました。果たしてその通りになっています。絶対的な価値、つまり真理が存在しない時代において、生きる目的もまたありません。人はニヒリズムの時代をどう生きればいいのでしょうか。この本によれば、ニーチェは一時期は芸術によって生きることの無意味さを忘れようとしています。しかしこれも最終的結論ではなく、結局ニーチェはここに答えは出さないのです。生きることが無意味であるなら、答えを出すことはできません。これはニーチェの知的誠実さであり、同時に哲学という営みの厳しさであるように思えます。
もっと試験に出る哲学 「入試問題」で東洋思想に入門する
解説が大変わかりやすいうえ、これ一冊でウパニシャッド哲学から仏教・儒教・老荘思想から日本の儒学・国学、さらには日本の近代哲学まで俯瞰できてしまうという、きわめてお得な内容になっています。入試問題への回答という形で多くの哲学を解説していますが、面倒なら入試問題は読まなくても大丈夫です。
この本では普段あまり触れることのない江戸の思想史もわかりやすく解説されていて、『論語』や『孟子』の理想に帰れと主張した伊藤仁斎、儒教や仏教の説く理屈は、理解しやすいがゆえに人間のつくりごとだと考えた本居宣長など、興味深い思想家が日本にも数多くいたことを知ることができます。
この本の著者は西洋哲学の入門書『試験に出る哲学』も書いていますが、西洋哲学は『やさしすぎる哲学入門』のほうがわかりやすいことと、東洋哲学が一冊で学べる本があまりないのでこの本を選んでみました。
自分の頭で考えたい人のための15分間哲学教室
「自分の頭で考えよう」といいますが、物事を一から自分の頭で考えるのはとても大変なものです。そんなとき、役立つのが過去の偉大な哲学者たちの思考法です。『自分の頭で考えたい人のための15分間哲学教室』では、「悪いことはなぜ起こるのか」「自由意志は存在するか」「因果応報は存在するか」など、さまざまな問題について古今の哲学者の思想を紹介しつつ検討しています。物事を考えるうえで、過去のどの哲学者の考えが役立つのかよくわかります。
この本の17章における、意図主義と帰結主義についての議論は興味深いものです。ある行動の評価は動機によるべきか、それとも結果によるべきか。これは多くの方が一度は考えたことがあると思います。この問題について、カントや墨子はどう考えていたのかがこの章を読むとわかります。哲学とは過去の遺物ではなく、身近な物事を考えるうえでも必要になることも知ることができます。
その悩み、哲学者が解決しています
悩み相談の形式で、古今東西の哲学者の思想を紹介する内容です。「会社を辞めたいが辞められない」「ダイエットが続かない」「やりたいことがない」など、身近な悩みを多くとりあげているので、抵抗なく読みすすめていくことができます。
外見的コンプレックスを解消する方法としてはサルトルの実存哲学、退屈な日常から抜け出すノウハウとしては道元の禅を紹介するなど、哲学を悩みの解決ノウハウとして紹介しているのがこの本のユニークな点です。実生活に役立てようという工夫がこの本には見られます。「承認欲求を真に満足させるには」という、現代的な悩みも取り上げられていますが、この悩みに哲学がどう答えるのかは読んでのお楽しみです。実践的かどうかはともかく、さまざまな哲学への入り口としてはわかりやすく、親しみやすい内容だと思います。
眠れなくなるほど面白い図解論語
論語には、「過ぎたるはなお及ばざるが如し」「己の欲せざる所は、人に施すことなかれ」など数多くの名言があります。これらは有名ですが、簡潔すぎて少しわかりにくいものがあるのも確かです。この本では論語の言葉をイラスト付きで丁寧に解説しつつ、現代社会に引き付けて解釈しているので、非常にわかりやすい内容になっています。
雑学コラム「論語ちょっといい話」も面白い内容で、このコラムには渋沢栄一『論語と算盤』の解説も収録されています。
世界のエリートが教養として身につける「哲学用語」事典
アポリアや定言命法・弁証法やエートスなど、哲学には独自の用語が少なくありません。これらの言葉が哲学をとっつきにくい学問にしているのは間違いないのですが、この本ではこれらの哲学用語をわかりやすく解説し、哲学書を読むハードルを低くしてくれます。
この本はカバーしている範囲がわりと広く、加速主義やゼノフェミニズムなど、あまり聞きなれない言葉の意味も解説されています。最近よく耳にする反出生主義についても解説されていますが、この本を読むと、ショーペンハウアーがこの考え方の元祖だったことがわかります。イギリスには「反出生主義の党」が存在するとも書かれていますが、これは現代社会における生きづらさの象徴のように思えてきます。
考える教室 大人のための哲学入門
プラトン、デカルト、ハンナ・アレント、吉本隆明という四人の哲学者の著作を紹介しつつ、それぞれの哲学者の思想の核心にせまる本。この本で紹介されているハンナ・アレントの「労働」観は、現代人の考え方に再考を迫るものです。
アレントの考える「労働」と「仕事」は異なります。「労働」は働いてお金を稼ぐことではなく、いのちの営みそのもので、仕事を辞めても人は「生きる」という労働に従事していることになります。人は誰でも「労働」しているのですが、主に「仕事」の評価によって人の価値がはかられるのが現代社会です。そんな世界だからこそ、アレントの語る「労働」論に耳をかたむける価値があります。